D.I.Y.好きなサッカージャンキーによる、音楽から哲学まで思いついたことを何でもありで書きなぐる適当ブログ

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Blog of the thinking people, by the thinkng people, for the thinking people!

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『ハクソー・リッジ』~作り物とわかってても受け入れられない現実

更新日:2018.12.16 | 公開日:2018.06.05

変態、メル・ギブソン監督が、やってくれました。
前作『アポカリプト』から10年、
題材が太平洋戦争の沖縄戦だということ、そしてそのあまりに過激なシーンは、前作を超える、との前情報もあり、なかなか見るに踏み切れなかったこの作品。

見なきゃいけない。特に、日本人は、見なきゃいけない気がします。

あらすじ(超簡潔に)

過去のトラウマと、敬虔なキリスト教(恐らく原理主義)信者であることから、自らを『良心的兵役拒否者』とする主人公、デズモンド・ドスは、自ら志願して陸軍に入隊する。
しかし、彼はモーゼの十戒、そして自らに課した誓約により、人を殺めるだけでなく、自らが武器を手にすることもできない。
上司や同僚は、そんな彼が何故兵隊となり戦地に赴こうとするのかが理解できず、様々な方法で除隊を促す。
だが、彼は頑なに除隊を拒む。
彼が為そうとしているのは、戦争で戦う人々の命を、救うことだった。

彼の意志がどのようなものなのか、そしてどれだけ堅いものであるのか、
仲間たちは戦地で知ることになるのである。

実話です。

『悪』の存在しない世界で、絶対的な『善』であること

戦争には、悪者は存在しない。わたしはそう考えています。
戦争そのものは、絶対的な『悪』だと思う。
だけど、その戦争を引き起こす環境や指示者たちを責めるべきで、
戦地でいかに兵士たちが非道な行いをしようとも、彼らを、責めるべきではないのではないかと思うのです。
戦争が悪い。全部戦争が悪いんだ。

この映画は、アメリカ兵の目線ではあるものの、
“日本が悪”、“アメリカが正義”という描かれ方はされていません。
ただ、ここまで戦場をリアルに表現されると、半ば自暴自棄とも思える日本軍の行動は、本当に恐ろしかった。
日本兵も、アメリカ兵も、戦う理由はたった一つ。
戦争だから。
本当にくだらない。本当にくだらない状況下なのだけど、
そこで自らの命を張って戦う彼らを、やはりバカにすることはできないです。

そんな地獄、正に地獄の中で、
デズモンドは、完全なる、『善』でした。
光があるから影があるように、悪があるから善がある、そんな風に捉えていたけれど、
見終わった後、考えが変わりました。
『悪』のない場所にも、『善』は存在し得るのではないかと。

ある兵士がどのような人生を歩んできて、どのような最期を迎えるかを見せることで「かわいそう、やっぱり戦争は良くないね」という描き方をされた映画をチラホラ見たことがあるけれど、ずっと違和感を感じていた。
戦争の悲惨さを伝えるためには、悪を描いちゃだめなんじゃないか。
恐らく、敵は悪、味方は善、戦地の兵士たちは、そう信じて戦っている。
だけど、見ているこっちは、そこに共感してはいけないと思う。
悪がないからこそ、「この人たちは、どうしてここまでしなきゃいけないんだろうか」「この人たちが信じているものは何なんだろうか」と、戦争のくだらなさが目の当たりにできるのではないだろうか、と思うのです。

異常が日常

映画の中で、個人的に最も恐ろしく感じたシーンがある。
それは、
「朝が来たこと」。
本当に“地獄”としか言いようのない一日が終わり、夜が来て、ひと時の休息を得た後、
朝が来たのです。
朝が来て、また、あの恐ろしい地獄に赴く。
夜が来て眠り、朝が来て働く。
至って普通な流れが、舞台が戦場だということで、どれだけ異常な光景に映るか。

「変態」だから撮れた名作

この映画は、メル・ギブソンだからこそ撮れた名画だと思います。
とてつもなく悲惨だけれど、悲劇に描いてない。
だからこそ、一番恐ろしく、生きているということを、この安全な環境でただ映画を見ているわたしたちにまで、考えさせることができたんじゃないだろうか。

主人公演じるアンドリュー・ガーフィールドも、めちゃくちゃ良い味、出してます。

後半は、とても見るに堪えないシーンの連続でしたが、
見て、良かったと思ってます。

メル・ギブソンを『変態』と呼ぶ理由は、ネットで彼の名を検索するとすぐに出てくると思うので、省きますね。